「よくかんで食べてね」
オムツ姿で寝たきりのラブラドルレトリバーに、女性スタッフがスプーンを差し出した。お湯でふやかしたエサを食べ終えると注射器で水を飲ませてもらう。満足したようにベッドに寝そべった。
神奈川県小田原市の「アサワペット牧場」。元々ミカン畑だった千平方メートルの敷地に、9〜17歳の犬35匹が暮らす。人間だと60〜100歳だ。
チワワやマルチーズなど犬種は多岐にわたり、2割が健康に問題を抱える。内臓が悪い犬のエサには薬を混ぜ、寝たきりの犬は寝返りを打たせる。病気がわかれば預け主に連絡して治療するかどうかを判断。死んだら近くの寺で火葬する。
幼少から犬好きだった秋沢良彦さん(41)が「世話の難しい老犬の面倒を見たい」と脱サラ。01年に始めた。
7年間に、宮城から宮崎までの約100匹を預かった。預け主は中高年で金銭的余裕のある人が大半だ。月2回訪ねて来る人もいるが、半数は金の振り込みだけで老犬の様子を尋ねてくることはない。1カ月の料金は大きさにより約2万8千〜3万7千円。
横浜市の独り暮らしの女性(69)は10月、ケアハウスへの入居を控え、15年連れ添ったビーグル犬を預けた。めったにほえないが、ホームに連れて行くと、「ワン、ワン」と甲高い声で鳴き続けた。
「結婚も出産経験もない私には、実の子どものような存在だった。最後まで世話してあげたかったけど、寄る年波には勝てない」と涙ぐむ。
需要の高まりを受け、一時的に愛犬を預かるペットホテルも事業に参入し始めた。
大阪府八尾市の「ペットのお店パートナー」は05年にサービス開始。冷暖房完備の2階を老犬ホームの専用部屋にし、5匹を預かっている。2カ月に1度は近くの動物病院で健康診断。飼い主の希望があれば、散歩の様子などを写した写真を添えて近況をメールで伝える。一生涯の預かり料は一律120万円だ。
約70社でつくるペットフード工業会の07年調査によると、飼い犬の半数が、老化が始まると言われる7歳以上。ワクチン接種などで平均寿命が延び、人間以上のスピードで高齢化が進む。昼夜なく鳴き叫び、自力で排泄(はいせつ)が困難になるケースも。せわしない介護で不眠に陥るなど、特に高齢の飼い主の負担が大きい。
広島市の「おりづるホーム」は07年にオープン。代表の三町隆さん(61)は「お金で飼育放棄したと罪悪感を抱く人もいるが、家族の介護などで仕方ないケースもある。保健所行きや安楽死を防ぐ受け皿になりたい」と話す。(高島靖賢)
2008年11月16日11時59分asahi.com






